車明洙 車明洙は英国ウォーリック大経済学博士で嶺南大教授。主著である車明洙『飢餓と奇跡の起源——韓国経済史1700〜2010』 -の内容についてはすでに紹介した。 金洛年編『植民地期朝鮮の国民経済計算1910−1945』(2006)で、車明洙は第13章「経済成長・所得…
金洛年 金洛年(1957〜)は1981年にソウル大経済学科を卒業、1993年に東大大学院で経済学博士号を取得し、同年東国大教授に赴任した。2022年に定年退職し、2024年には韓国学中央研究院長に就任した。 金洛年は安秉直とともに早くから中村哲の研究会に参加し…
『反日種族主義との闘争』への反応 2020年5月に『反日種族主義との闘争』が刊行されると、ハンギョレ新聞は早速社説で「統計数値や回顧録の中の一部の内容を選択的に取り上げたり誇張する方法で歴史を歪曲している」と決めつけ、慰安婦を侮辱する奴は許せん…
李承晩『独立精神』 『反日種族主義との闘争』の韓国語版には、李栄薫による『李承晩の“独立精神”を読もう』という別冊が付いている。李栄薫は2017年にソウル大経済学部教授を定年退職してから李承晩学堂の校長をしていることもあり、李承晩(1875〜65)の再…
『反日種族主義との闘争』の刊行 『反日種族主義』の続編である『反日種族主義との闘争』は、2020年5月に刊行された(日本語版は9月)。各章は冒頭で『反日種族主義』への批判を紹介し、それに反論する形で書かれている。 李栄薫の第1〜3章はハンギョレ新…
ハンギョレ以外での論争 李栄薫は『反日種族主義』の第1章で趙廷来のベストセラー『アリラン』を猛非難し、時代考証がまるでなっておらず、ありもしない日本の残虐行為を並べ立てて反日感情を煽ったと断罪した。特に土地調査事業を妨害した朝鮮人農夫を日本…
ハンギョレ紙上での論争 2019年9月、ハンギョレ新聞は『反日種族主義』に対する専門家の批判を三回にわたって掲載した。最初の批判者は経済史専攻の許粹烈忠南大教授で、日帝強占期には所得格差が広がり、成長の果実は日本人に集中し、朝鮮人の幸福度を全く…
『反日種族主義』騒動 2019年8月、李栄薫編著『反日種族主義』が出版されるや否やバカ売れし、2週で10万部を突破した。韓国日報の이진희記者は「あれがどうして1位か?」と衝撃を受け、本屋で立ち読みしたり買った人に突撃インタビューした。返って来た答えは…
2010年代の論争 2010年1月、韓永愚梨花女大教授は植民地近代化論を批判し、「歴史学界ではこの理論に従う学者はほとんどいない。18世紀から大韓帝国に至る時期に遂げた民主化と産業化の実績が充分に論証されたためだ」と萌芽論を支持した。一方で「収奪論」…
京城ブームとエッカートの植民地近代化論 8月15日は日本では終戦記念日、韓国では光復節だが、2007年の光復節を控えた7月14日、東亜日報の洪賛植論説委員は「歴史学界の主流である収奪論に対抗し、植民地近代化論が勢いを増している」と紹介した。そして「日…
李栄薫と『大韓民国の物語』 李栄薫は2002年に安秉直の推薦でソウル大経済学部教授の地位を継いだ。2005年4月、李栄薫は韓国史の教科書にある「日本に強制連行された朝鮮人は650万人」「従軍慰安婦として動員された朝鮮人女性は20万人」という数字はいずれも…
安秉直と植民地近代化論の登場 植民地近代化論は、日本統治期の朝鮮経済を収奪の観点からのみ把握しようとする従来の経済史を否定し、収奪と開発の両面を見ようとするものである。そのパイオニアである安秉直は、かつて「植民地半封建社会論」を提唱し、韓国…
植民地近代化論以前の朝鮮経済史研究 西洋式の実証主義的アプローチによる朝鮮史研究は日本人学者によって始められた。戦前の日本人による朝鮮史研究は「植民史観」と呼ばれ、韓国では蛇蝎の如く忌み嫌われている。経済史に関する「停滞性論」は代表的な植民…
北京 2025年10月6日、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、坂口志文京都大学名誉教授ら3人に今年のノーベル医学生理学賞を授与すると発表した。坂口教授は大隅良典東京工大栄誉教授(2016年ノーベル医学生理学賞)とともに2015年にガードナー国際賞を受賞…
ソウル 韓国マスコミの「ノーベル症」 で述べたように、自然科学分野のノーベル賞受賞者がまだいない韓国のマスコミは焦燥感を感じており、特に日本人が受賞した年には騒ぎが大きくなる。今年は日本から医学生理学賞と化学賞の受賞者が出たが、韓国人の受賞…
八田與一(1886〜1942)は嘉南大圳を手がけた土木技師で、台湾では伝説的な人物である。嘉南平原の広大な面積を灌漑し稲作を可能にした八田の功績は高く評価され、台湾の歴史教科書を読む や台湾の反日教材 認識台湾で紹介したように教科書には必ず登場する…
任文桓(임문환、1907〜93)は日本統治期の朝鮮総督府官僚で、韓国独立後は李承晩政権で農林部長官をつとめた。任文桓は韓国語で『바우덕은 나일까』세한출판사(1973)と日本語で『愛と民族』同成社(1975)という二つの自伝を書いたが、後者は鄭大均(首都大…
金山(김산、本名張志樂、1905〜38)はニム・ウェイルズ『アリランの歌』で紹介された朝鮮人革命家で、広州コミューン蜂起(1927)に参加後、共産党員として中国各地で抗日運動に従事した。 ニム・ウェイルズ(本名Helen Foster Snow、1907〜97)は『中国の…
정유라(1996〜) 朴槿恵大統領を弾劾・逮捕に追い込んだ崔順実ゲート事件は、崔順実の娘チョン・ユラ(정유라、鄭維羅)がフェイスブックに書き込んだ罵詈雑言から始まった。京郷新聞の社説(2016年10月19日付)によると、2014年の国家代表選抜を兼ねた乗馬…
김정윤(1997?〜) 2015年6月2日、中央日報ワシントンDC版の전영완(チョン・ヨンワン)客員記者は、ハーバード大とスタンフォード大が一人の天才少女をめぐって誘致競争を繰り広げていると伝えた。天才少女の名は김정윤(キム・ジョンユン、英語名Sarah Kim…
이준석(1945〜) 2014年4月17日、京畿道安山市の壇園高校の修学旅行生らを乗せた清海鎮海運の貨客船セウォル(世越)号が全羅南道珍島郡の沖合で転覆し、死者299人、行方不明者5人を出す大惨事になった。朝鮮日報の社説によると、船が傾き始めたとき船長を…
신경숙(1963〜) 2015年6月、신경숙(申京淑)の短編小説「伝説」(1996年)が、三島由紀夫の「憂国」(1960年、김후란の韓国語訳は1983年)の盗作だという告発が Huffington Post Korea に掲載された。告発した詩人で小説家の이응준は、「それこそひとりの…
조현아(1974〜) 2014年12月9日、韓信財閥のご令嬢で大韓航空副社長の조현아(趙顕娥)は、ニューヨークのJFK空港で滑走路に向かっていた仁川行きKAL086便の機内で、パーサーのマカデミアナッツの出し方が気に入らないとヒスを起こし、飛行機を搭乗口に戻さ…
キムパプ屋と日式ラーメン屋 2009年にビビンバを「羊頭狗肉」とこき下ろして「ビビンバテロ」を食らった産経新聞の黒田勝弘ソウル支局長は、ビビンバの代わりにキムパプを推奨していた。 【外信コラム】ソウルからヨボセヨ ノリ巻き賛歌 [産経新聞 2011-08-0…
済州島のあわび粥 韓国政府は2008年に「韓食世界化推進プロジェクト」を開始し、新聞広告や各種イベントを通じて韓国料理の普及につとめた。その甲斐あってか、2010年には日本やフランスで韓国料理が大人気だという報道が出た。 韓国料理に魅せられた日本 […
縁起物のテジモリ かつて海外では日本料理といえば生魚を中心としたゲテモノというイメージが強く、欧米では嫌悪と嘲弄の対象だった。またドキュメンタリー映画で蛇料理を出す東京のゲテモノ専門店が紹介されたため、日本人は蛇を主食としていると本気で信じ…
朝鮮(韓国)は中国と日本という世界的に知名度が高い国に挟まれているため、十数年前まで韓国人は自国の知名度の低さに盛んに劣爆(劣等感爆発)していた。特に日本と混同されたり、日本の一部とみなされることは、韓国人にとって恐ろしい屈辱である。プレ…
松田寿男・森鹿三編『アジア歴史地図』平凡社,1966,12頁 ヨーロッパ発の世界帝国は古代ローマ以外にない。ローマ帝国はトラヤヌス帝(在位98〜117)の時代に最大版図を現出し、トルコからモロッコ、ポルトガルに達する地中海沿岸全域とブリテン島南部までを…
メソポタミアで発生した最初の世界帝国はアッシリア帝国で、ティグラト・ピレセル3世(在位紀元前745〜27年)の時代にイラン西部からナイル川流域にまたがる領域を支配した。アッシリア人はアフロアジア語族でメソポタミア北部から勃興したが、紀元前6世紀に…
中央アジアはメソポタミア、インド、中国の間にある古代文明の空白地帯で、古くからスキタイ系、モンゴル系、テュルク系、イラン系、チベット系などの遊牧民が走り回っていた。紀元前後には西域(新疆)をめぐって漢と匈奴が争い、6世紀には突厥が新疆からカ…