juraian’s blog

東アジア史、ナショナリズム、反日言説に関する個人研究

中国

ティモシー・バードソン『よろめきの巨人』

Timothy Beardson, Stumbling Giant: The Threats to China’s Future, Yale University Press, 2013. 著者のバードソン(Tomothy Beardson)はCrosby Financial Holdingsの創業者で、30年以上香港で勤務した銀行家だそうである。サブタイトルにあるように、…

李中清・王豊『人類の1/4』

James Z. Lee and Wang Feng, One Quarter of Humanity: Malthusian Mythology and Chinese Realities 1700-2000, Harvard University Press, 1999. 著者の李中清(James Z. Lee)は香港大学、王豊(Wang Feng)はカリフォルニア大学アーヴァイン校の教授。…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (7) 中国の反韓流

少女時代のアルバム 第1次韓流ブームへの反発 中国では1997年のTVドラマ『愛が何だって』で韓流ブームが始まったとされる。2005年9月からは『大長今(邦題:宮廷女官チャングムの誓い)』が大人気となり、韓流ブームがピークに達した。すると中国の芸能人が…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (6) 韓国文化泥棒説

初期の韓国起源説 2005年に江陵端午祭が世界文化遺産に登録されると、中国では「歴史も文化も人物も全て盗む韓国」を非難する報道が相次いだ。初期には全くの捏造というわけではなく、たとえば東方網の「<韓国史>中国領土を韓国が支配、百済はチベットを統治…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (5) 中国起源説

韓食 キムチ以外で中国が宗主権を主張した韓国料理に参鶏湯がある。2021年3月の聯合ニュース記事によると、百度百科は参鶏湯が中国から韓国に伝来したと記述した。具体的には「中国古老的広東粤菜湯類家常菜之一、伝至韓国後成為最具代表性的韓国宮中料理之…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (4) 韓服起源論争

水原華城 中国人が韓服を着ると韓国人は怒る 韓国人は中国メディアで朝鮮族が韓服(チマチョゴリ、パジチョゴリ)で登場すると、韓国を属国化しようという意図に思えて嫌な気分になるらしい。2008年北京夏季オリンピックの閉会式では、韓流スターのピが中国…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (3) 中韓キムチ紛争

韓国料理 キムチ寄生虫卵騒動 キムチは韓国料理を代表する食材であるだけでなく、韓国文化の重要なアイコンの一つでもある。しかし今世紀初頭にはすでに安い中国産キムチが国内市場を席巻しており、「キムチ宗主国」を自認する韓国としては歯がゆい状況だっ…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (2) スポーツの中韓戦

済州ワールドカップ競技場(2003年3月) ショートトラックをめぐるいざこざ 2007年2月の長春冬季アジア競技大会で、ショートトラックのリレーで2位になった韓国女子チームは表彰台で「백두산은우리땅(白頭山はわが地)」と書かれたプラカードを掲げた。中…

韓国と中国、葛藤の軌跡 (1) 東北工程

W. E. Griffis, Corea the Hermit Nation, 1882〜1911. 東北工程(東北辺疆歴史与現状系列研究工程)は満州史研究に関する国家プロジェクトで、韓国では高句麗・百濟・渤海の歴史を韓国から奪って中国史に編入するものだとして激しい反発が起きた。「高句麗…

韓国と中国、葛藤の軌跡 序文

三田渡碑横の銅板(2008年1月) 中韓は1992年に国交を結び、年々経済協力関係を強化して行った。一方で隣国どうしが仲が良いわけがないので、中韓の間でも様々な葛藤が続いてきた。金大中大統領(1998〜2003年在任)は2001年10月に訪中して中韓関係を重視す…

中国高等学校歴史教科書

ここで紹介するのは、旧樹懶庵の「中国の歴史教科書を読む」(www7.plala.or.jp/juraian/ctextbook.htm)で取り上げた2種類の教科書のうちの一つである。 民教育出版社歴史室(小島晋治・大沼正博・川上哲正・白川知多訳)『中国の歴史-中国高等学校歴史教…

戦乱と疫病・飢饉のコラボ (1) 中国

中国では王朝交替のたびに農民反乱があり、時には大規模な人口崩壊があった。死亡率が上がるのは戦乱に飢饉や疫病が重なった場合だが、その事情は飢饉が反乱の引き金になったり、戦争が疫病を広めたりとさまざまである。ここでは中国史における戦乱と飢饉・…

陳舜臣『太平天国』年表

陳舜臣『太平天国』講談社文庫, 1988. この年表は陳舜臣の歴史大河小説『太平天国』から作成した。実在の人物の言動も史実とは限らない。中国暦の日付しか書かれていない場合は、中央研究院のサイトによって西暦に変換した。 https://sinocal.sinica.edu.tw …

陳舜臣『阿片戦争』年表

陳舜臣『新装版 阿片戦争』講談社文庫, 1973. この年表は陳舜臣の歴史大河小説『阿片戦争』から作成した。連維材のような架空の人物はもちろん、実在の人物の言動も史実とは限らない。中国暦の日付しか書かれていない場合は、中央研究院のサイトによって西暦…

中国の反日と反韓

旧樹懶庵のこのページ(www7.plala.or.jp/juraian/chinajk.htm)は、韓国人を挑発するために2012年12月ごろ韓国語(중국의 반일과 반한)で書いた。説得力を持たせるため日本語の資料はなるべく避け、ニュースサイト等のリンクは日本語以外のものを優先した…

中国の著名犯罪者

ミステリ小説を読んでいると、日本なら宮崎勤や宅間守、アメリカならテッド・バンディやエド・ゲインのような著名犯罪者が引き合いに出されることがある。ここでは中国のミステリ小説で言及されるかもしれない著名犯罪者についてまとめてみた。 高承勇(Gao …

中国疫病史年表

McNeill, William H., Plagues and Peoples, 1976. McNeill, Plague and Peoples(佐々木昭夫訳『疾病と世界史』中央公論新社, 2007)の付録には、『資治通艦』と『欽定古今図書集成』から採った1911年までの中国における疫病の年表がある。記述が長い箇所は…

中国の反日教材 抗日斗争故事

2010年前後の中国の抗日神劇ブーム時には、どのチャンネルをつけても抗日ドラマをやっていたらしいが、よく飽きないものである。それだけ「抗日」は中国人のアイデンディティと深く結びついており、中華人民共和国の国歌(義勇軍進行曲)も抗日戦争を背景に…

中国料理の名称

ここでは本に登場するおいしそうな中国料理の名称をリストアップしてみた。別に何かの役に立つわけではない。 邱永漢『食は広州に在り』竜星閣,1957. 邱永漢(1924〜2012)は台湾生まれの作家・実業家で、東京帝大経済学部を卒業して台湾で独立運動に関わっ…

中国の歴史教科書を読む

旧樹懶庵ページ(www7.plala.or.jp/juraian/ctextbook.htm)では、中国高等学校歴史教科書(人民教育出版社歴史室)と中学生2年生用の中国历史八年级(课程教材研究所)を紹介したが、ここでは中学歴史教科書に限定する。原文は日本漢字で書いていたが、j…

日朝中から見た日朝中 (23) 永井荷風「上海紀行」

永井荷風「上海紀行」『荷風全集 第一巻』岩波書店, 1992, pp. 365-370. 永井荷風(1879~1959)は著名な小説家で、『あめりか物語』『ふらんす物語』等の作品を残した。旧制中学卒業後の1897(明治30)年9月、父母と弟とともに上海に旅行した。「上海紀行」は18…

日朝中から見た日朝中 (20) 高杉晋作『遊清五録』

高杉晋作(1839-67)は奇兵隊で有名な長州藩士で、尊王攘夷派の志士として活躍した。文久2(1862)年に幕府が上海視察団を派遣すると、高杉は幕府使節随行員として参加した。視察団には五代友厚(薩摩藩)や中牟田倉之助(佐賀藩)らも参加していた。官船・千歳…

日朝中から見た日朝中 (18) 朴趾源『熱河日記』

朴趾源(今村与志雄訳)『熱河日記』東洋文庫325,328, 平凡社, 1978. 朴趾源(1737~1805)は李氏朝鮮時代の文人で、1780(正祖4)年の祝賀使に随行して北京・熱河に赴き、『熱河日記』を書いた。崇明排清をモットーとする主流派に対し、朴趾源は清の先進文…

日朝中から見た日朝中 (14) 『韃靼漂流記』

園田一亀『韃靼漂流記』東洋文庫539, 平凡社, 1991. 越前国三国浦新保村の国田兵右衛門他58人は1644(寛永21→正保1)年、3艘の船で奥州に向かう途中遭難し、現ロシア沿海地方のポシェット湾付近に漂着した。そこで土民に襲われ、生存者15人は奉天、次いで北…

日朝中から見た日朝中 (11) 崔溥『漂海録』

최부 씀, 김찬순 옮김, 표해록 - 조선 선비 중국을 표류하다, 겨레고전문학선집 14, 보리, 2006. 崔溥(1454〜1504)は朝鮮前期の文臣で、1487年に推刷敬差官として済州島に赴任し、翌年中国に漂流したが生還した。1488年閏正月3日に朝鮮本土に向けて済州島…

日朝中から見た日朝中 (4) 円仁『入唐求法巡礼行記』

円仁(足立喜六訳注・塩入良道補注)『入唐求法巡礼行記』東洋文庫157,442, 平凡社, 1970,1985. 円仁(794~864)は天台宗の僧侶で、最澄に師事した。838(承和5, 開成3)年7月、三度目の渡海で揚州に漂着した。天台山行きを願うが許可されず、不法滞在を決…

欧米から見た中国 (12) イザベラ・バード『中国奥地紀行』

イザベラ・バード(金坂清則訳)『中国奥地紀行』東洋文庫706,708, 平凡社, 2002. イザベラ・バード (Isabella L. Bird, aka Mrs. J. F. Bishop, 1831~1904) は英国の旅行作家で、三度目の朝鮮訪問である1895年11月のソウル・平壌間旅行の後、12月に上海に渡…

欧米から見た中国 (11) ジョージ・N・カーゾン『極東の諸問題』

George N. Curzon, Problems of the Far East: Japan-Korea-China, Kessinger, 2007. ジョージ・N・カーゾン (George Nathaniel Curzon, 1859~1925) は英国の政治家で、インド総督、外務大臣を歴任した。ケドルトンの男爵家に生まれ、オックスフォード大で…

欧米から見た中国 (10)グスタフ・クライトナー『東洋紀行』

グスタフ・クライトナー(小谷裕幸・森田明)『東洋紀行』東洋文庫555,558,560, 平凡社, 1992-93. グスタフ・クライトナー (Gustav Kreitner, 1847〜93) はオーストリーの軍人・外交官で、1877~80年にハンガリー貴族セーチェーニ・ベーラ伯爵の東洋旅行に同…

欧米から見た中国 (9) アーサー・スミス『支那的性格』

A・H・スミス著(白神徹譯)『支那的性格』中央公論社, 1940. アーサー・スミス(Arthur Henderson Smith, 1848〜1932)はアメリカの宣教師で、1872年に米国伝道委員会から派遣され天津に渡った。1880年からは山東省の龐家莊という農村の教会で伝道に従事…