juraian’s blog

東アジア史、ナショナリズム、反日言説に関する個人研究

韓国と中国、葛藤の軌跡 (2) スポーツの中韓戦

済州ワールドカップ競技場(2003年3月)

ショートトラックをめぐるいざこざ

 2007年2月の長春冬季アジア競技大会で、ショートトラックのリレーで2位になった韓国女子チームは表彰台で「백두산은우리땅(白頭山はわが地)」と書かれたプラカードを掲げた。中国オリンピック委員会は激怒し「もう一度同じようなことが起きたら大会への参加資格を取り消す」と韓国側に通知した。これに対して韓国代表団は謝罪した(聯合ニュース 2007-02-02)。しかしスポーツワールドの심현석記者は、この行為を全面肯定し選手たちを擁護した。

 

https://m.sports.naver.com/general/article/022/0000207644

‘백두산 세리머니’, 이유 있다 [스포츠월드 2007-02-02]

写真をもう一度見よう。あの天真爛漫に笑う顔にどんな政治性を発見できるか。答はもう出た。少女たちが明らかにした理由は明らかだった。「中国が偏頗判定をして開幕式前から白頭山を中国名である長白山と弘報する冊子とポスターを配って韓国人の国民情緒を刺激したため」だ。「先に」手を出したのは中国だった。

 

 2010年2月のバンクーバー冬季五輪では、ショートトラックの韓国代表チームが練習中に中国代表チームの関係者がビデオ撮影しているのに気づき、怒ったコーチがペットボトルを投げつける騒ぎがあった。取材に応じた中国代表チームの李琰監督は、「この会場では撮影が許可されており、どのチームも戦力分析用に撮影している」とし、「韓国代表チームは撮影されるのを嫌うが、何でもないことを騒ぎ立てているだけ」と切り捨てた。

 

http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=107&oid=001&aid=0003122750

<올림픽> 한-중 쇼트트랙, 비디오 촬영 '감정충돌' [연합뉴스 2010-02-15]

 

 2月24日に行われた女子3000mリレーでは、中国と韓国が抜きつ抜かれつの大熱戦の末、韓国チームが中国を引き離して真っ先にゴールした。韓国チームは太極旗を掲げて大喜びしたが、直後に失格を告げられた。テレビで生中継を見ていた韓国人は怒り狂い、ネットは大炎上した。

 

https://m.sports.naver.com/general/article/117/0002061694

'오! 악몽', "아무리 돌려봐도 실격 아냐"…女계주 金무산에 네티즌 폭발 [마이데일리 2010-02-25]

韓国選手たちが茫然自失して涙を流す姿にネチズンたちは「いったいわれわれが何をどうしたて反則だというのか」「中国が間違ったと強力に抗議できないか」「なぜわが国だけ常に失格の犠牲羊にならなければならないのか」「2002年ソルトレイクの悪夢がよみがえった」「映像を何回見てもなぜ失格なのかまったく理解ができない」等判定に激しく抗議した。

 

 ネット上では中韓ネット民の罵り合いが収まらず、環球時報が記事にして数人の識者にコメントを求めるほどだった。

 

https://www.recordchina.co.jp/b40082-s0-c60-d0000.html

ショートトラック>韓国失格で中国が金メダル、両国の中傷合戦に識者が意見 [Record China 2010-02-27]

これに関し、中国国際問題研究所の晋林波(ジン・リンボー)研究員は「スポーツは公平・公正であるべきで、結果についても平常心を持つべきだ。韓国国民の気持ちは理解できるが、スポーツを国家間の争いにまで引き上げることはふさわしくない。両国民とも寛容さと自制心を持ち、民族主義的な感情を控えてほしい」と主張する。

 

 朝鮮日報は2013年3月のショートトラック世界選手権の結果を報道しながら、執念深くバンクーバー五輪の件を引き合いに出して中国の選手を批判した。

 

https://www.chosunonline.com/svc/auth/index_login.html?contid=2013031200409&code=news

ショートトラック:卑怯な中国選手にやられた韓国女子 [朝鮮日報2013-03-12](期限切れ)

2010年バンクーバー冬季五輪で韓国のショートトラック女子は1994年リレハンメル五輪以来初めて「金メダルなし」の屈辱を味わった。中国の王濛(写真)が500メートル、1000メートル、3000メートルリレー全てで優勝して3冠を達成、韓国の優勝を阻んだ。10日までハンガリーデブレツェンで行われたショートトラック世界選手権でも、王濛は健在だった。王濛は2009年以来4年ぶりに個人総合優勝を果たした。だが、優勝までの過程は決して美しいものではなかった。

 

 2018年2月の平昌冬季オリンピックの女子3000メートルリレー決勝では、今度は中国チームが失格となり、韓国が優勝した。環球網は不可解な反則が連発された状況に「もはや理解不能」と怒りをあらわにした。

 

https://www.recordchina.co.jp/b571111-s0-c50-d0135.html

「韓国開催の五輪はもはや理解不能」=中国がショートトラックでまたしても失格 [Record China 2018-02-21]

さらに、「今大会のショートトラックでは、19日の時点ですでに34回の反則が取られ、11の国や地域がその被害に遭った」と指摘。「最大の被害者」は中国であるとした上で、「困難があっても頑張らなければならない。しかしこんな(不可解な反則ばかり取られるという)困難を克服するのは、天に昇るよりも難しいかもしれない」としている。

 

 2022年2月の北京冬季オリンピックショートトラック男子1000mの準決勝では、韓国の有力選手が2人とも失格となった。決勝では1位でゴールインしたハンガリーの選手も失格となり、中国選手が金銀のメダルを獲得した。韓国のネット民はSNS上で不満を爆発させた。

 

https://japanese.joins.com/JArticle/287506?sectcode=670&servcode=600

「中国冬季スポーツ大会」…「公正」消えた五輪にネットユーザー憤怒 [中央日報 2022-02-08]

7日午後11時現在、ツイッターではショートトラック競技に対する批判があふれている。リアルタイムの人気ワードを見せる「トレンドキーワード」には、「フェアプレ−」とともに「スポーツ大会」と「お前ら同士」が選ばれた状況だ。ツイッターでは北京冬季五輪をめぐり「スポーツ大会水準だ。それならお前ら同士で運動会をやってろ」という形のツイートが絶え間なく上がってきている。

 

 これに中国のネット民は「平昌での悪行の報いだ」と嘲弄した。

 

https://japanese.joins.com/JArticle/287495?sectcode=670&servcode=600

北京五輪>「汚い韓国、反則なしでは競技できないのか」…黄大憲嘲弄する中国 [中央日報 2022-02-08]

この過程で中国のネットユーザーは「韓国選手はなぜこのように反則ばかりするのか」「平昌(ピョンチャン)で悪いことをたくさんした報い」と批判した。……このほかにも「韓国ショートトラックはなぜこのように汚いのか」「韓国ショートトラック選手たちが全滅した」「(韓国は)反則なしでは競争できないのか」「北京五輪ショートトラック競技はとてもどきどきする」などの意見が相次いだ。

 

 韓国選手団は競技終了後、国際スケート連盟(ISU)と国際オリンピック委員会IOC)に抗議の文書を送った。さらに大韓体育会は、「判定での被害が続く場合、スケート種目の大会ボイコットも検討している」と表明した。

 

https://www.wowkorea.jp/news/read/334521.html

「大会ボイコット」も検討…大韓体育会、ショートトラックの不可解判定に「選手の心理治療おこなう」 [WoW!Korea 2022-02-08]

 

 作家のパク・ハンスルは、冷静を呼びかけ若者の反中発言を抑制しようとする大人を批判した。

 

https://japanese.joins.com/JArticle/287641?servcode=100&sectcode=120

【私は告発する】「反中」をよく思わない高邁な方々に…これは中国嫌悪ではありません [中央日報 2022-02-10]

ところが一部の高邁な方々はこのような状況をかなりよく思っていないようです。……本当に理解し難いことです。青年たちの理由ある反中を一体なぜ「嫌悪」などと決めつけるのでしょうか。

 

 一方、ハンギョレのクォン・テホ論説委員は、若者の反中感情に便乗して支持を得ようとする尹錫悦や李在明(当時はいずれも大統領候補者)を批判した。

 

https://japan.hani.co.kr/arti/opinion/42510.html

[コラム]韓国の反中政治 [ハンギョレ新聞 2022-02-10]

しかし政治家なら、反中感情に便乗するよりも、これをどのように克服すべきか考えなければならない。不当な判定は公式チャンネルを通じて強く抗議する一方、スポーツを国内政治に持ち込んで政治的利益を得ようとするのは正しい姿勢ではない。

 

サッカー中韓戦をめぐるいざこざ

 2010年2月10日、東京で行われた東アジアサッカー選手権(現EAFF E-1サッカー選手権)で中国が韓国に3-0で勝利した。中国が韓国に勝ったのは32年ぶりだった。中国人は狂ったように喜び、韓国人は激怒した。大韓サッカー協会のホームページには激怒したファンによる書き込みが殺到し、サーバがダウンした。

 2010年8月に山東省で行われたウェイ坊国際青年サッカー大会で、韓国の高校代表チームがレッドカードを受けたことに猛抗議し、韓国選手1人が審判につばを吐きかけ、結局試合を放棄した。

 

https://news.livedoor.com/article/detail/4939760/

韓国選手が審判につば、監督「中国は永遠に低レベル」 [サーチナ 2010-08-11]

韓国の南基永監督は試合後、選手が審判につばを吐いたことについては謝罪。しかし、判定に対する猛反発の姿勢は崩さず、「中国選手にも反則があったが、審判は警告すらしなかった」、「われわれの選手には、いきなりレッドカードを出した」と述べ、「こんな判定をするようでは、中国のサッカーは永遠にレベル向上が難しい」と批判した。

 

 2023年3月にウズベキスタンで開催されたサッカーU-20アジアカップ中韓戦は、延長線の末韓国が3-1で勝利した。中国ネット民は善戦しただけで満足したが、韓国メディアのOSENが「良心も羞恥心も忘れた暴力サッカー」と報道したことが知られると激怒した。

 

https://www.recordchina.co.jp/b910742-s39-c50-d0192.html

韓国メディア「中国の暴力サッカー、良心も羞恥心も失う」に中国反発 [Record Korea 2023-03-14]

OSENの報道を受け、中国のSNS上では「プレーがうまくいかないとすぐに恨み言」「暴力サッカーと羞恥心について言うなら、(2002年W杯で韓国と対戦した)イタリア、ポルトガル、スペインも言いたいことがあるはず」などのコメントが寄せられたという。