
2015年6月、신경숙(申京淑)の短編小説「伝説」(1996年)が、三島由紀夫の「憂国」(1960年、김후란の韓国語訳は1983年)の盗作だという告発が Huffington Post Korea に掲載された。告発した詩人で小説家の이응준は、「それこそひとりの一般人としてもそうで、ましてひとりの純粋文学のプロ作家としては到底容認され得ない明白な『作品窃盗行為−−剽窃』だ」と断罪した。
http://www.huffingtonpost.kr/eungjun-lee/story_b_7583798.html(リンク切れ)
우상의 어둠, 문학의 타락 | 신경숙의 미시마 유키오 표절 [Huffington Post Korea 2015-06-16]
ハンギョレ新聞の取材に対し、申京淑は「三島由紀夫はだいぶ前に『金閣寺』を読んだだけで『憂国』は知らない」と回答した。さらに問題の短編集を出版した創作と批評(創批)出版社は、「文章で類似性があってもこれを根拠に剽窃云々するのは問題がある」「申京淑作家の音楽と結びついた描写の方が比較優位にある」と申京淑を擁護した。
https://japan.hani.co.kr/arti/culture/21045.html
申京淑氏、盗作疑惑を全面否定「読んだこともない本」 [ハンギョレ新聞 2015-06-18]
これにはネット上で轟轟たる非難が飛び交い、各新聞も社説やコラムで納得が行く解明を要求した。その後、京郷新聞とのインタビューで申京淑は指摘された部分の文章が酷似していることを認め、「依然として読んだ記憶がないが、自分で自分の記憶を信じられなくなった」とすっとぼけた弁明をした。当然、非難の声は沈静化しなかった。
https://japanese.joins.com/JArticle/202221?sectcode=430&servcode=400
申京淑氏「盗作問題提起、正しいと思う」…不明瞭な謝罪に逆風 [中央日報 2015-06-24]
申京淑の夫で文芸評論家の남진우(南眞祐)明智大教授は、雑誌『現代詩学』への投稿文で申京淑の盗作騒動が「善悪二元論的判決」と「無分別な輿論裁判」に流れたと批判し、ボルヘスやボードレールの例をあげて模倣や翻案が常に悪いわけではないと主張した。そして「剽窃は文学の終末でなく開始だ」と妻を擁護した。
http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=shm&sid1=103&oid=028&aid=0002294915
[단독] 신경숙 남편 “표절은 문학의 종말이 아니라 시작”[한겨레 2015-11-02]
申京淑は盗作による出版社の業務妨害と詐欺罪で告訴されていたが、検察は出版社側に処罰を求める意思がないとして不起訴処分とした。
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/04/01/2016040100561.html
三島由紀夫「憂国」盗作疑惑の韓国人作家に不起訴処分 [朝鮮日報2016-04-01]
申京淑は4年ほど作品を発表せずにいたが、2019年の『創作と批評』夏号に中編「船に積まれたものを河は知らない」を発表した。また同時に掲載された「作品を発表して」という文の中で、「若い日の一時の油断で私の執筆活動に重大なミスが発生し、そういうことがあったという事実自体を忘却したまま長い時間が流れた」として、作品に三島由紀夫の文章を紛れ込ませたのはあくまでミスであって意図的な剽窃ではないと言い張った。
https://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=103&oid=081&aid=0003001298
‘표절 논란’ 신경숙, 신작 발표…‘사과문’ 냈지만 ‘의도적 표절’ 인정은 모호 [서울신문 2019-05-23]
翌年には長編「父のところに行ってきた」を『創作と批評ウェブマガジン』に連載し始めた。この作品は2021年3月に創批社から単行本として出版されたが、それに先立って申京淑はオンライン記者会見に応じた。ここでも申京淑は「若いころ知らぬ間に犯した過ちのため、足の甲に刺さった熊手を見下ろす心情で過ごした」と、あくまで意図的な剽窃でなくミスだったと繰り返した。
https://n.news.naver.com/mnews/article/020/0003342068?sid=103
“다시 한 번 깊이 사과”…‘표절 논란’ 신경숙 6년만에 독자 앞에 서 [동아일보 2021-03-03]
当然、このような弁明を信じる者は少数と思われる。2023年には申京淑の騒動をめぐって、作家の張康明と創批社の間で一悶着あった。張康明はエッセイ集『小説家というおかしな職業』を創批社から出版する契約を結んだ。しかし「申京淑の剽窃を創批が詭弁で擁護して剽窃の基準をなし崩しにしようとしたのに対し、韓国作家会議はついに何ら論評も出さなかった」という部分に創批社が「剽窃か否かは客観的に立証されておらず張康明の主観的な主張であり」「剽窃ではないという創批社の立場にも一理ある」と修正するよう求めてきた。張康明は「あれが剽窃でないならどんな剽窃も剽窃でなくなる」とブチ切れ、契約を破棄して他の出版社から刊行した。
https://n.news.naver.com/mnews/article/032/0003204848?sid=103
‘베끼는 모습 못봤으니 단정할 수 없다’고?···장강명 ‘창비, 신경숙 표절 옹호’ 재비판 [경향신문 2023-02-14]