
2008年4月26日、長野市で行われた北京五輪の聖火リレーにチベット独立支持派と反対派が押しかけ、所々で小競り合いが起きた。日本の右翼団体と中国人団体の間での小競り合いでは、中国人の男性が顔を殴られ軽傷を負った。これが中国で報じられると、インターネット上では日本製品の不買を呼びかける書き込みが多数掲載された(NIKKEI NET 2008年4月27日付)。
サーチナは2009年に中国のブログを翻訳紹介する連載を続けていたが、2009年2月16日に紹介されたブログは「中国人が日本製品を使用することはアヘンをすうのと同じ」「日本人は団結して欧米企業をボイコットしている」「中国人も日本製品をボイコットすれば国内産業の発展に寄与できる」と主張した。しかし抵制日貨に懐疑的だったり反対するブログの方がずっと多く紹介された。
2010年6月にダライ・ラマが訪日すると、中国ネット上では日本製品をボイコットせよという書き込みが相次いだ(サーチナ2010年6月19日付)。9月7日には尖閣諸島付近で操業中の中国漁船が海上保安庁の巡視船2隻に体当たりをかまして逃走を試みた。海上保安庁は漁船を停止させ、公務執行妨害の疑いで船長を逮捕した。これを報じた環球網のコメント欄には船長への称賛が溢れ、「民間人でありながら血と汗で祖国を守った」「漁船じゃなく空母だったらよかったのに」などと書き込まれた(サーチナ2010年9月7日付)。
9月13日に船長を除く船員14人が解放され帰国すると、中国ネットは「中国外交の重大な勝利だ」と大盛り上がりで、日本製品不買の呼びかけも相次いだ(読売新聞2010年9月13日付)。在中日本人への嫌がらせも相次ぎ、広州の日本領事館にビール瓶が投げつかられ、北京の日本大使館前ではクラクションが5分以上鳴り続け、天津の日本人学校の外壁にはパチンコ玉が打ち込まれた(産経新聞2010年9月16日付)。柳条湖事件があった9月18日には各地で反日デモが起きたが、公安当局は厳戒態勢で臨み、日の丸に火をつけようとした参加者は制止され、汚職を批判するプラカードを掲げた参加者は拘束された(サーチナ2010年9月19日付)。
日中間で外交上の緊張状態が続く中、IT商業新聞網は「日本を屈服させるのはチョー簡単」という記事を掲載した。サーチナの柳川俊之による紹介記事は「レアアースを肇として」など推敲が足りていないようで、「汽車」は「自動車」の訳し忘れだろうか。ともあれ、3つの方法とは①日本製品の販売中止、②レアアース等の輸出停止、③中東原油の買い占めだった。
https://news.livedoor.com/article/detail/5027168/
すごく簡単…日本を中国の言いなりにさせる3つの方法 [サーチナ 2010-09-23]
IT商業新聞網の記事通り、中国のレアアース禁輸の脅しに日本はチョー簡単に屈服し、詹其雄船長を釈放した。
http://www.asahi.com/special/senkaku/TKY201009240180.html
尖閣沖の衝突事件、中国人船長を釈放 「日中関係考慮」 [朝日新聞 2010-09-25]
中国外交部は船長の釈放だけでは満足せず、日本側に謝罪と賠償を要求した。菅直人首相がこれを拒否すると、中国ネットは怒りのコメントで溢れた。
https://news.livedoor.com/topics/detail/5034199/
尖閣問題:菅首相「謝罪と賠償を拒否」で、中国人「改めて怒り」 [サーチナ 2010-09-27]
記事のコメント欄には、日本製品の不買や希土類(レア・アース)の対日輸出禁止を呼びかける書き込みや、釣魚島(尖閣諸島の中国側呼称)から日本人を追い出せとする声、沖縄を“取り戻せ”とする主張、日本に謝罪させてから国交断絶を求める声などが並んでいる。対日感情は好転のきざしをみせていない。
10月16日、四川省成都市、陝西省西安市、河南省鄭州市で反日デモが発生し、日系スーパーや日本料理店が襲撃され、ガラスやネオン看板が破壊された。香港の文匯報はこれらが共産党の指導下にある各大学の学生会が組織した官製デモだったと報じた。成都市では学生会が一ヶ月前から準備し、校内で日本製品ボイコット運動も行ってきたという。
http://paper.wenweipo.com/2010/10/17/YO1010170001.htm
數萬人遊行示威 內地爆反日怒潮 [文匯報 2010-10-17]
このことは中国人も気づいており、ネットでは「本当に自発的なデモか? 愛国青年たちは当局の操り人形だ」「中国でほぼ同時に各地でデモが自発的に起こせるはずはない。当局に組織されたとしか考えられない」といった書き込みが相次いだ(毎日新聞2010年10月17日付)。ジャーナリストの宮崎正弘も「今回のデモは中国当局の完全なヤラセです。国内で充満する政府への不満のガス抜きであることは明白です」と指摘し、日本領事館などがなく経済発展が遅れた内陸部が官製デモの舞台に選ばれたとした(zakzak 2010-10-18)。このように中央当局は反日デモの拡散を頑張って押さえ込んでいたが、2年後にはいよいよ歯止めが効かなくなる。