
韓国と台湾は日本の植民統治下で近代化を成し遂げ、20世紀後半には奇跡と呼ばれるほどの経済発展を実現した。その成長過程や転換のタイミングはよく似ていたが、色々と異なる点もあった。ここでは日本時代からの韓台比較経済史を試みる。
まず両国の経済発展のシンクロぶりに関する結論を先取りすると、次のようになる。なお、台湾を「国」と呼ぶと中国が怒るらしいが、英語で「both economies」「both societies」は言えても日本語の「両経済」「両社会」は言えないので「両国」とした。
1930年代 日本の拡張政策による工業化
1940年代後半 日本の植民統治から解放され大混乱
1960年ごろ 政府主導による家族計画プログラムを開始
1960年代 高度経済成長期に入る
1980年代中盤 出生率が置換水準を下回る
1990年代 先進国並みの所得水準に到達
2000年代 出生率が世界最低水準まで低下
2019〜20年 人口減少開始
2020年代 所得水準で日本を凌駕
2040年代 日本を凌駕し世界で最も高齢化した国に

高度経済成長とは、経済成長率が人口増加率を大きく上回ることによって一人当たり所得が上昇することだが、高度経済成長期の韓国・台湾の経済成長率は必ずしも日本の絶頂期より高くなかった。後発効果は人口変動の方によく現れており、ピーク時の人口増加率は日本より高く、今後の人口減少速度も高齢化の水準も日本より深刻になると考えられる。所得水準の低下は、日本では人口減少中に起きた。韓国・台湾でも同じことが起きるとしたら、両国は一人当たり4万ドル時代を経験せずに終わる可能性もある。今後中国でも人口減少、高齢化、所得水準の低下が起きるとしたら、結局先進国水準に到達せずに終わる「未富先老」が現実化するかもしれない。
目次
序文
(1) 植民地時代
(2) 混乱期
(3) 高度経済成長
(4) 植民地朝鮮の人材
(5) 植民地台湾の人材
(6) 人口問題
(7) 結論