juraian’s blog

東アジア史、ナショナリズム、反日言説に関する個人研究

東アジアエンタメ史 ドラマ②

韓流の原点

 韓流を巻き起こしたごく初期のコンテンツは姜帝圭監督の映画「쉬리(シュリ)」(1999)、KBSドラマ「겨울연가(冬のソナタ)」(2002)、男性アイドルグループのH.O.T.あたりだろうか。このうち日本では冬ソナの影響が圧倒的で、第一次韓流ブームはすなわち冬ソナブームだった。冬ソナがなぜヒットしたかについては、色々な人が色々なことを言っている。その中で放送した張本人であるNHKの小川純子プロデューサーは、中高年女性向けの純愛ドラマが日本には存在しないため、隙間市場で成功できたとした(聯合ニュース2005年6月23日付)。このジャンルの不在に対しては、10年以上前に田麗玉が文句を言っていた。

 

疲れた時に甘いケーキが食べたくなるように、外国生活のストレスから私は甘ったるい恋愛ドラマが見たくなった。しかし、日本のテレビには厳密にいって恋物語はなかった。(『悲しい日本人』195頁)

 

 このように韓国人女性にとってはベタな純愛ドラマを見るのが当然でも、日本の中高年女性の多くは自分が見たがっているものに気づいていなかっただろう。またあんな甘々でベタベタの純愛モノなど、当時の日本人クリエータは痒くて痛くて作ろうともしなかったに違いない。そんな潜在需要を見破った小川PDの慧眼の勝利といったところか。

겨울연가(冬恋歌)
 続いてヒットしたドラマはMBC「大長今(宮廷女官チャングムの誓い)」(2003〜04)で、2004年に台湾と日本、2005年に香港と中国で放送された。この作品は台湾と香港で記録的な視聴率を上げ、香港では視聴者がテレビを見に家に帰ってしまうため飲食店の売上げが40%減少したという(聯合ニュース 2005年5月6日付)。中国では夫に「大長今」視聴を禁じられた妻が川に身投げした(ジョイニュース24 2005年9月29日付)。あまりの人気に中国の芸能人がこぞって「大長今」を扱き下ろし、当局が韓流への警戒を強めたことは

韓国と中国、葛藤の軌跡 (7) 中国の反韓流に書いた通りである。「宮廷女官チャングムの誓い」は日本でもそれなりの人気を集めたが、その後は映画、ドラマともこれといったヒット作がなく、日本の第一次韓流ブームはあっさり冷めた。

 

韓流民族主義

 アジアにおける韓流ブームの拡散は韓国人の自尊心を心地よく刺激し、恍惚境に陥らせた。韓国科学技術院教授の전봉관のコラム「韓流を越えて」は、この事情を次のように説明している。

 

https://www.hankookilbo.com/news/article/200703050251625093

[삶과 문화] 한류를 넘어서  [한국일보 2007-02-27]    

중국이나 동남아를 여행할 때면 한류가 우리들만의 착각이 아님을 새삼 실감하게 된다. 쇼핑센터에는 명품 대접을 받는 한국산 제품들이 가득하고, 도로에는 한국산 자동차들이 즐비하다. 한국 드라마와 한국 연예인이 등장하는 광고도 수시로 접할 수 있다. 한류는 분명 허상이 아니라 실재하는 문화현상이다.

中国や東南アジアを旅行すれば、韓流がわれわれだけの錯覚ではないことを改めて実感することになる。ショッピングセンターには一流品の待遇を受ける韓国産製品が一杯で、道路には韓国産自動車が整然と並ぶ。韓国ドラマと韓国の芸能人が登場する広告も、随時に接することができる。韓流は明らかに虚像ではなく実在する文化現象だ。

 

 これは中国や東南アジアに関するものだが、日本に関するものもある。최동호高麗大教授の「韓国の‘横車法’と日本文化の浸透」は日流の浸透を扱ったコラムだが、話の枕として次のように書いている。

 

https://www.seoul.co.kr/news/newsView.php?id=20070315030008

[문화마당] 한국 ‘떼법’과 일본 문화침투/최동호 고려대 국문과 교수·시인 [서울신문 2007-03-15]

일본 속의 한류에 대해 말하는 사람은 많다. 도쿄의 지하철에서 한국말을 거리낌 없이 하게 된 것도, 일본의 가라오케에서한국 노래를 마음껏 부를 수 있게 된 것도 한류 열풍에 힘입은 것이리라. 언뜻 보면 마치 한국이 일본을 점령한 것 같은 기분에 빠져들기 쉽다.

日本内の韓流に対して語る人は多い。東京の地下鉄で韓国語をはばかりなく話せるようになったのも、日本のカラオケで韓国の歌を思いのまま歌えるようになったのも、韓流熱風のお陰だろうと。ふと見れば、まるで韓国が日本を占領したような気分に陥りやすい。

 

 他に김헌식文化評論家の「韓流を予測できなかった理由の反復」にも「遅ればせに韓国人は、海外の反応によって自ら自負心を持つようになった」とあるし、이문원の「東方神起と怪物は韓流ではない」も「韓国文化を海外で楽しんで消費するということは、もちろん嬉しいことだ。産業的にのみならず、文化的自負心の面でも好材だ」としている。これらは韓流が韓国人の自負心を高めたことを客観的に述べているだけだが、中には本気で痛いコラムもある。곽재용晋州教大教授の「韓流はわれわれにかかった」は、「世界的にもオンドルはわれわれの固有な文化だ」「われわれの飲食文化は世界最高だ」「インターネットの普及率と速度面でわれわれが世界最高だ」と韓国最高!を連発し、そうした韓国文化を韓流を通じて世界に広めなければならないとした。アメリカ国防研究院の오공단の「韓国のイメージ」は、各国で聞いた韓流や韓国製品への社交辞令をいちいち真に受け「韓国に生まれた徳を引き続き享受したい」と書いた。

 

https://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0000356974

한류를 예측하지 못한 이유의 반복 [오마이뉴스 2006-09-27]

https://news.nate.com/view/20070211n10221

'동방신기'와 '괴물'은 한류가 아니다 [뉴시스 2007-02-11] 

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한류는 우리에게 달렸다 [경남일보 2006-02-27]

https://n.news.naver.com/mnews/article/020/0000396366

[동아광장/오공단]한국의 이미지 [동아일보 2007-03-30]  

 

 どこのイエロー・ジャーナリズムもそうだが、韓国のスポーツ新聞や芸能ニュースも扇情的な表現を売り物にしている。そうしたメディアは何かというと「日本征伐」「中国征服」のように書きたがる。かつて裴勇俊はこのような記事に苦言を呈し、「裴勇俊日本征伐」「裴勇俊日本を跪かせる」のような記事を書いてくれるなと要求した。もちろんヨン様に怒られたからといって、イエロー・ジャーナリズムが突然クオリティー・ペーパーに生まれ変わるわけがない。一年半後、ピのプロデューサーの朴鎭英は「マスコミが‘日本征伐’‘中国征服’式で書くから外国で反韓流の気流が形成されるのだ!」とぶち切れ、「映画や音楽のような文化商品から‘韓流’という国家ラベルを剥がさねばならない」と息巻いた。多くのコラムニストがこの発言に言及し、ほとんどが賛成する立場を表明した。唯一批判した김종휘の「韓流は元来脱民族、錯覚させるな」[中央日報2007年2月9日]も「その主張のために正体がぼんやりした '韓流民族主義' を狙ったのでは、かえって民族主義をけしかける口実を与える」としており、民族主義を擁護したわけではない。

 

https://m.entertain.naver.com/home/article/117/0000022204

배용준 "한류에 찬물 끼얹지 말아야" [마이데일리 2005-09-07]

https://www.joongang.co.kr/article/2628692

'비' 키운 박진영씨 도발적 제안 [중앙일보 2007-02-07]

https://www.joongang.co.kr/article/2630875

"한류는 원래 탈민족 착각하게 하지 말라" [중앙일보 2007-02-09]

 

 しかしヨン様に怒られてもこりなかったスポーツ新聞や芸能ニュースが、コラムニストが束になって批判したからといって扇情的な表現をやめるわけがない。朴鎭英発言からわずかひと月後の2007年3月、李準基が主演映画『フライ・ダディ』のプロモーションのため日本に発つと、スポーツソウルは「王の男・李準基、日本列島攻略秒読み」と見出しを打ち、YTNの芸能ニュースは「日本もこの手中にある!」とやった。これらの記事はネットに残っていなかった。

 

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왕의남자 이준기 일본 열도 공략 초읽기 [스포츠서울 2007-03-13] 

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일본도 이 손안에 있소이다! 이준기 일본 프로모션 현장 [YTN STAR 2007-03-15] 

 

 朴鎭英がぶち切れたのはマスコミだけではなく、民族主義を叫ぶ政治家やネチズンに対しても同様だった。ネチズンに関しては、ピの中国公演でチャイナ服を着てカンフー・ダンスをさせようとしたところ、ネチズンから「なぜ韓国の自尊心を捨てて中国のものに従うのか!?」という非難が殺到したという。韓流が韓国的なものでなければならないという主張は、かつてはコラムニストの間にも見られた。たとえばヘラルド経済の社説(2005年1月3日)は、「韓流が必ず韓国の伝統文化を代表する必要はないが、国籍不明の歌と踊りを主流にすることは考えて見る問題だ」と遠慮がちながら韓国的なコンテンツを期待した。しかしアジア諸国に嫌韓・反韓感情が蔓延していると見ると、こうした主張は影をひそめた。

 

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[사설]`한류의 세계화` 가능하다  [헤럴드경제 2005-01-03]

 

金鍾學の悲劇

 金鍾學は1976年にMBCに入社し、ドラマ製作部門でキャリアを積んだ。1995年にMBCを退社してジェイコムを設立し、脚本家の宋智娜とのコンビで製作した「砂時計」が平均視聴率45%の大ヒットとなり、ドラマPDとしての名声を確立した。1999年には金鍾學プロダクションを設立し、「ゴースト」(1999)、「神話」(2001)、「大望」(2002)などを手がけた。

 2004年には宋智娜脚本、裵勇俊主演の「太王四神記」の製作を発表し、音楽監督に久石譲、CG監督に「ロード・オブ・ザ・リング」のブリジット・バークを迎え、「日本で衰えつつある韓流熱風を甦らせる!」と息巻いた。ところが裵勇俊が台本にダメ出しするなどで撮影が開始できず、アメリカから来たCGチームはギャラだけ受け取って帰って行った。どの時点かはわからないが、金鍾學は製作費に充当しようと自宅も売却した(マネートゥデイ 2008年7月2日付)。製作費430億ウォンをかけた「太王四神記」は予定から2年遅れの2007年9月からMBCで放送され、平均視聴率27.0%の好成績を上げた。しかし日本での視聴率は7%程度で、金鍾學プロダクションは381億ウォンの赤字を出した(朝鮮日報 2008年2月22日付)。

 金鍾學プロダクションは2008年も74億ウォンの赤字を出した。また「太王四神記」「イ・サン」「インスンはきれいだ」などの出演者へのギャラ未払い問題が表面化し、破産説が広まった(聯合ニュース 2009年1月5日付)。2013年には製作中の「信義」のギャラ未払いで訴えられ、横領詐欺容疑で警察の調査を受けた。金鍾學は財産のほとんどを失い、京畿道城南市の考試テル(受験生向けの格安宿泊施設)で暮らしていたが、7月23日に練炭自殺したところを発見された(朝鮮日報 2013年7月25日付)。

김종학(1951〜2013)

引用文献

田麗玉(金学文訳)『悲しい日本人』たま出版,1994.