
韓国人は日本の「妖怪文化」がうらやましいらしく、新聞でも物欲しげなコラムが散見される。2016年にスマホゲーム「ポケモンGO」が大ヒットすると、朝鮮日報はその土台には日本の妖怪文化の伝統があると主張した。
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/07/28/2016072801154_2.html
ポケモン成功の裏に日本で100年続く「妖怪学」 [朝鮮日報 2016-07-28]
ポケモン・フランチャイズの世界的な成功の裏には、日本で100年前から続いてきた「妖怪学」の土壌があると専門家たちは指摘している。日本では20世紀初めに妖怪学が学問として認められて研究が進み、現在も世界妖怪協会などが活動している。ポケモンのキャラクターは妖怪学を基盤に生まれたということだ。
朝鮮日報の鮮于鉦論説委員(当時)は、哲学者の井上円了や民俗学者の柳田國男が妖怪伝説を研究し、水木しげるが漫画に描いて大衆化した土台の上に今日のポケモン人気があるとした上で、韓国が真似しようとしてもすぐに成果が出るわけではないと警告した。
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2016/07/29/2016072901058.html
【萬物相】日本の妖怪学 [朝鮮日報 2016-07-29]
だが、前後を入れ替えては困る。日本はキャラクター産業を見据えて妖怪学に没頭したわけではない。妖怪の付加価値に早くに気付き、政府が投資したわけでもない。自国の伝統文化に対する学者たちの深い愛情、自国の伝統文化を大衆に伝えたいという漫画家の強い思いが、100年以上にわたり幾重にも積み重なり、今日の成果に至った。スマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」のヒットを受け、「韓国版妖怪学」を育成しようとまた無駄金を使うのではないか、今から心配だ。
実は朝鮮にも妖怪譚は多いのだが、鳥山石燕・円山応挙・葛飾北斎らが幽霊や妖怪の絵を描きまくった日本と異なり、朝鮮では才能ある画家が妖怪を描かなかった。また演劇文化が発展しなかったため、芝居用にドッケビの仮面や衣装を工夫することもなかった。このため朴美暻が解説しているように、ドッケビのヴィジュアルに関するしょうもない論争が起きている。
それでも地道に妖怪譚を収集している人はいて、朝鮮日報の「英雄より魅力的な悪党… K妖怪をご存知ですか」という記事によると、『よこしまでけしからぬものども』という著書を出した古典小説研究家の이후남博士は、様々な「K妖怪」を発掘したという。
https://n.news.naver.com/mnews/article/023/0003666926?sid=103
영웅보다 매력적인 악당… ‘K요괴’를 아십니까 [朝鮮日報 2022-01-18]
「これまで古典小説77編で計158種類の妖怪を見つけ出しましたよ」。彼女は新刊『よこしまでけしからぬものども』(ヌルワ)で、これらのうちおよそ20種類を紹介した。これまでなかなか見られなかった韓国の妖怪列伝というわけだ。同書は、まさに多彩な妖怪たちの供宴だ。人をだまし、変身するキツネや、サル、トラの妖怪がいるかと思えば、空を飛び回って美人をさらう「金のブタ」の妖怪、6本の腕で剣を振り回す身長15メートルのイチョウの木の妖怪、さらには水の中で毒を噴き出す、家ほどの大きさがある毛の塊の妖怪もいる。
この記事に対し、環球網は「韓国メディアがまた文化的な挑発、今回は日本と『妖怪』について争う」と批判的に伝えた。
https://www.recordchina.co.jp/b888247-s39-c30-d0052.html
韓国メディアがまた文化的挑発、今度は日本と「妖怪」の奪い合い [Record Korea 2022-01-19]
これについて、環球網の記事は「朝鮮日報の記事はネットを通じて日本にも投稿され、物議を醸している」と説明。日本のネットユーザーの反応として「『K』を付けないと自信が持てないのか」「日本のものをコピーして頭に『K』を付けて起源を主張する」「妖怪ウォッチの起源を主張してくるぞ」「韓国のパクリ文化、日本か中国をパクるしかない」といった声を紹介した。
朝鮮の古典小説は中国の影響下にあっただろうが、ドッケビや夜光鬼などは朝鮮土俗の妖怪だろう。以下では朴美暻に依拠してドッケビ論争を概観した上で、이후남より100年近く前に朝鮮の鬼神信仰を研究した村山智順が収集した妖怪譚を整理してみる。
引用文献
朴美暻『韓国の「鬼」—ドッケビの視覚表象』京都大学学術出版会,2015.
村山智順『朝鮮の鬼神』朝鮮総督府,1929.
目次
序文
(1) ドッケビ論争
(2) ドッケビ以外の鬼
(3) 龍と蛇
(4) 雑多な妖怪
(5) 疫病と禳鬼法